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Exhibition

「黒糖のにほい」藤田夢香+坪谷彩子展

会期:2007年5月22日(火)〜6月3日(日) 
場所:美篶堂ギャラリー 千代田区外神田2-1-2東進ビル本館1F
URL:http://www.misuzudo-b.com/gallery.html

1998〜1999年の冬から春に、沖縄はるか南、波照間島の製糖工場で働いた詩遊人Aと、その住まいを預かった創作家Yがやりとりした絵日記を、2007年に再発見する展覧会。

遠く海を隔てた地を往復したスケッチブック=絵とことばの綴られた日記から、時を経て新しい記憶を重ねるようにもう一度小さな詩集を作りました。
南の島にも微かな柔らかい季節の移り変わりがあり、慌ただしく時間の流れる東京では愛しい人や街との対話がありました。

時は流れても、記されたことばから、島の空気や風変わりな石の家で留守番をした作家の暮らしが浮かび上がって、どこか遠くに居る大切な人を思い出すかもしれません。

詩集(活版印刷+美篶堂装丁限定本も作製予定)や、当時の暮らしの記憶をたどる小品などを展示・販売、2007年2月に取材した波照間島と製糖工場もご紹介しました。

□詩画集「黒糖のにほい」藤田夢香+坪谷彩子 
表紙:バガス紙 本文:活字印刷 35頁 挿絵4枚入 
美篶堂製本・装丁 限定60部 7000円

書籍のお問い合わせ&ご購入:美篶堂03-3258-8181 
または=book-tokyoまで mail: rooni@mac.com

Contents
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essay
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Exhibition

上:坪谷作品 中:藤田作品 下:詩画集「黒糖のにほい」

「黒糖のにほい」のためのメモ

●活字

にわかに活字ブームが起こされているこの頃。でも、職人さんたちはずっと変わりなく、仕事を続けてきました。今回活字印刷を刷っていただいた堀小平さんとは、1998年に波照間島へ行く前に一度お仕事をお願いしたことがありました。「1:1」というアートブックにいれる石版画の絵に、ジョバンニを主人公にした「旅をするひと」という書き下ろしの物語を、英文と和文で刷っていただきました。
私の無知のせいで、三椏紙の透けるほど薄手の紙に、すでに石版画を刷った状態のものをお渡ししてしまいました。ところが、一枚も失敗をせずに、6ptたらずの小さな英文も美しく、ほれぼれする出来映えで、心の底から活字と職人技に感動いたしました。活字って、美しい。
その後、また石版画と詩集をセットにした作品集を作ったのですが、その時にもトレーシングペーパーに刷っていただくことができました。
一昨年は、西山千晶さんと一緒にした展覧会の本仕立てにした作品を、やはり活字印刷していただきました。
そして今回で4度目です。地道で変わりないお仕事ぶりは、最初にお願いした時と変わりありません。ただ、最初にお願いした時よりもだいぶ世の中も活字印刷、活字文化が消えつつあることへの認識は高まってきているように感じます。
ブームとしてデザインの流行のように使われずに、文化としてしっかりと根を張っていって欲しいと願わずにはいられません・・・。

●プルースト

「失われた時を求めて」とてもページをめくる勇気は無い(根気というのか)のですが、冒頭の方に顕れる、あまりにも有名なエピソードは私も大いに影響を受けているのだと、今回の展示を計画している間にも再認識しました。
記憶は円環的に存在する時間の中で、繰り返し作り直される、というのか。波照間島に住んだのは確かに8年前なのですが、その当時の記憶を今もう一度作り直しているように感じています。それは、藤田夢香さんと交換していた絵日記の存在があったからで、自分自身が書いたものがまるで遠い別の女性が書いたもののように感じられたことから始まっています。ようやく、そのくらいの時間が経ったのかもしれません。
今回は、1回目の円環でしょうか。まだこなれていない印象があります。展覧会の展示もわたしたちが、往復絵日記をもてあましているような、曖昧さを感じさせるのではと思っております。それほどに、記憶を自分のものとするのには、時間と労力が必要なのだということを実感する機会にもなりました。


●本の力 美篶堂の製本
今回は、嬉しいことにわたしたちの物語を、美篶堂さんに製本していただくことができました。バガスというサトウキビのカスを使った再生紙の表紙、見開きには、黍畑のイメージと、東京神田神保町の1998年頃のイメージを使いました。本文の間に4点の作品を挟んでいただいて、それでも、まっすぐと、何事もなかったように美しいたたずまいの本が出来上がってきて、正直にいって美しすぎて困ってしまいました。
本だけがあれば良い、なんて思ってしまったのです。限定60部で販売しております。もちろん本文はすべて活字の組み、印刷で、花裂には古いピンク色の和紙(私の亡くなった祖母が、書をしたためるために使っていた大きな大きな紙の一部です)を選びました。もちろん、繰り返し印象の変わる交換日記形式の物語も、じっくりと体験していただきたいと思うのですが、本の美しさも長く時間をかけて眺め、触って、めくってみて感じていただければ良いなと思っています。少々最後の方は宣伝めきましたが、展覧会覚え書きを。